ことばと文化のミニ講座

【Vol.7】 2005.8   元本学科教員 和田 正美

外来語是か非か。

言語はこんな分類が可能。

世界の言語は受容的言語と排他的言語に分けることができるのではないかと思うことがあります。受容的言語というのは外国語から語彙を取り入れやすい言語、その結果として外来語が多い言語のことのことであり、排他的言語というのはその逆の言語です。この分け方から見ますと、受容的言語の代表は私たちの日本語でしょう。実際、日本語ほど外来語が多い言語は珍しいといわなければならない。その点、フランス語は明らかに排他的言語であり、その理由の一つはフランス語の構造の中にあります。名詞は男性と女性に分かれ、動詞変化は複雑であるという構造には外国産の名詞や動詞が付け込む余地は少ないのです。それでは英語はどうなのかといいますと、この言語はどちらかといえば受容的言語であろうと思われます。以上のことにはそれぞれの言語の歴史がかかわっているとも考えられます。日本語は千数百年の昔、漢語を大幅に取り入れてその面目を一新しました。一方、英語は11世紀から約2百年間、フランス人がイングランドを支配した結果、土着のアングロサクソン語とフランス語が融合して、新しい言語が作り出されました。フランス語は本来のケルト語と、現代フランス語の祖である、ローマ時代のラテン語との間に断絶があります。

日本語の中の外来語。

ところで日本語の中の、漢語を除いた外来語について考えますと、圧倒的に多いのは英語から入った語ですが、他の外国語から入り込んだ語もあります。ジャムもハムもミルクももとは英語ですが、パンは英語ではない。「うちは毎朝パン食だ」のパン食をブレッド食と言ったりする人はいないでしょう。シュミーズはフランス語の中では男性のワイシャツという意味になることが多いのですが、日本語ではもっぱら女性の肌着という意味で使われております。近頃バイトと略称されることの多いアルバイトはドイツ語です。

外来語にはどのように対処すべきか。

それにしても日本語のように外来語がむやみに多いことは私たちの言語にとってプラスなのか、それともマイナスなのか?(あれ、プラス、マイナスという外来語を使ってしまいました!)日本語は受容的性格を持っているのですから、それをマイナスと決め付けるわけには行きますまい。プラス、マイナスをそれぞれ正、負に置き換えてみても何かしっくりしません。しかしここで条件をつけてみたくなります。外来語の使用が許されるのは、日本語の美しさと力強さ、すなわちその生命力を損ないさえしなければ、といった条件です。花をフラワー、店をショップとかブティックとか言ったりすることには賛成できません。言葉は単なる道具ではなく、それを使う人の在り方を左右する重要なものです。私たちはこの観点からすべての外来語の見直しをしたほうがよいのではないかという気がします。言語文化学科では学生と一緒にこういう問題を追求してみたいものです。

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